二世代で店を守る

あしかわ屋酒店

(取材:まっきー)

親しみやすい笑顔がステキな飯高英子さん(中央)と2代目尚昭さん・益巳さん。家族経営の温かい雰囲気に包まれたお店だ。

「自分が飲んで美味しいと納得したお酒しか置いていない。他に置いてないお酒を扱って差別化していかないとこれからは生き残れない」――あしかわ屋酒店の飯高尚昭さん。
 地酒の名品「越乃景虎」と「真澄」は蔵元の厳しい基準をクリアしないと特約店になれない。
 「お客さんに『美味しかった』と言ってもらえるのが一番嬉しい」と明るく話す。


お客さんが来ると店の奥に引っ込む??

 あしかわ屋酒店は飯高さんご夫妻と息子夫婦の2世代がお店に立つ。間口は狭いがにぎやかで明るい雰囲気のお店だ。店内は日本酒の越乃景虎や真澄、プレミアム焼酎、ビール、ワインなど幅広い商品が所狭しと並ぶ。


 「もう息子夫婦にお店は譲っているから邪魔かもしれないけど、お酒のビンを触って仕事をするのが大好きなの」とにこやかに語る初代の英子さん。


 店名の「あしかわ屋」は、初代の今朝資さんと奥様の英子さんが山梨県芦川村の出身のため。
 戦争の辛い時期を乗り越えて結婚した二人は、東京に出て来て今の土地に店を構えた。酒屋を営もうと思っていたが、お酒を販売するのには許可がいるため、まずは新宿にある酒屋の支部長のお店で奉公した後、最初の2年はホッピングやフラフープなどの雑貨を取り扱うお店からスタートした。よく売れて雑貨だけでも十分生計が成り立つほどだったが雑貨はキッパリと清算し、念願の酒屋を始めた。


 しかし、ツテもお客もなく始めた酒屋だったので、最初はいろいろとご苦労もあったそうだ。
「商人の娘じゃないから最初はお客さんがくると声をかけられず、逆に店の奥に引っ込んでしまったのよ」とか。
「昔は公団住宅のところが杉並車庫で、バスの運転手さんが仕事が終わると、一番近いうちをめがけてお酒を買いにきたのよ。夕方になると行列ができた」
「当時は日本酒をコップの計り売りをしていたので、お店の奥に上がり込んでお酒を飲み始める人もいてね(笑)」


 売り方だけでなく、買い方も変わってきている。最近は冷蔵庫代わりにその日に飲む分だけを買っていく人が多い。昔は日本酒の一升瓶を10本ドカンと届けた。
 「毎日飛ぶように売れたから体もよく動かして健康だった」と当時を懐かしく振り返る。

荷物も人も配達する

年末には贈答用にぴったりの大吟醸のラインナップが充実。日本酒好きは要チェックだ。

 ワイン、シャンパンとタバコの仕入れは若奥様の益己さんが担当。ワインはフランス、ドイツ、南米などのもので、1000円〜2000円台が中心だ。自分で試飲をして納得したワインを取り揃えている。

 

 タバコは現金仕入で返品がきかないため、お客さんの動きを見て、在庫を最小限にする在庫予測をしている。「いつもピッタリの予測でとても真似できない」と尚昭さんは言う。


 酒瓶は重い。嬉しいのが無料配達サービスだ。


 あしかわ屋は配達の最低金額はあえて設定していない。
 「缶ビール6本を配達したこともあります。でも、近くのコンビニで買ってもいいのに、わざわざうちで買ってくれるという気持ちが嬉しい」と尚昭さん。
 常連客になると、お酒の配達を頼むときに近所で買い物した荷物を置いていき「一緒に配達して」という人や、「どうせ荷物を届けるなら一緒に乗せていって」というツワモノのお客さんもいる。
 お酒だけでなく、荷物も人も配達する。それが出来るのは商店街の古き良き酒屋ならでは。

 親子二世代で一人一人の得意分野を生かした仕入れ・接客を行うあしかわ屋――時代のニーズが変わっても、そこには家族で支え合いながら店を営む変わらない笑顔がそこにある。

(2012.11.7取材)

私自身、大の日本酒好き。しかし、妊娠・出産を機に5年間も断酒していたのですが今回、あしかわ屋さんを取材したのをきっかけに日本酒解禁!すっかり尚昭さんイチオシの「景虎」ファンになってしまいました。いつでも美味しい日本酒が近所で買えるという嬉しさと、嬉しい無料配達サービス!近くにいい酒屋さんがあるというだけで気持ちが明るくなりますね。