あなたの欲しいもの、きっとあります

文具のヨシダ

(取材:うと)

 「なんと豊富な」――和田帝釈天に近い三叉路にある「文具のヨシダ」。
 店内に入ると、色とりどりのグリーティングカードにまず目を奪われる。音の出るものや光るもの、動くもの―見ているだけで楽しい。コンビニエンスストアやスーパーでは目にしない品物ばかりだ。

「欲しいものは何?」と子供たちに聞く

にこやかに商品の説明をしてくださる三木由紀さん。

 それだけではない。小学生、中学生、事務用品などの年代や用途ごとに分けて高さや配置を考えられた様々な商品が所狭しと並べられている。
 その秘密は、「子供たちに欲しいものを聞くの」と店番の三木由紀さんが教えてくれた。

 

 「文具のヨシダ」は、由紀さんの父が、戦時中の怪我から、脱サラして昭和23年に創業した。最初は現在環状七号線がある場所辺りに店を構えていたが、東京オリンピックの開催による区画整理によって現在の場所に移ってきたという。


 「あの頃はこの辺りもそれは賑わっていたのよ」と由紀さんの母親、吉田みな子さんは懐かしそうに目を細める。

 以前は社宅がたくさんあったが、時を経るうちに次第に減っていき、今は学校が近隣にいくつもあることで児童や生徒のお客が多くなった。
 客層が変わることによって売れる商品も変わる。
 時代が変わることで商品の選び方も変わる。

 「今の小学生は、限られた金額の中で必要な物を妥協せずに買っていくの。欲しいものがなかったら何も言わずに出ていってしまう。だから捕まえて教えてもらうの」と由紀さん。
細分化されたニーズに答えるための日々の努力が窺える。
 その言葉の通り、店内には 色々な種類を少しずつ。コンビニエンスストアやスーパーには真似できない売り方だ。

最近、のりや修正液は貼った後に待つ必要がないという利便性からテープタイプが人気だ。細分化された多種多様なニーズに応えようとする真摯な姿勢が窺える棚作り。


 最近の文具の革命ともいうべき商品は「消えるボールペン」だという。その逆転の発想ともいうべき画期的なボールペンは、なるほど豊富に取り揃えられていた。
 消しても冷凍庫に入れればまた色がでてくるそうなので、「秘密の手紙をかいてみてもいいですね」などと盛り上がった。

「目的買い」から「発見買い」へ

 文具店というと、目的買いをすることが多いのではないかと思う。
 筆者もそのひとりだったのだが、今回「文具のヨシダにお邪魔させて頂いてその認識を改めねばならないな、と感じた。

 

 洒落のきいたポチ袋や歌って踊るサンタクロースのグリーティングカード、折りたためる鋏やモダンな柄の折り紙など、文具の進化を目にして思わず興奮してしまった。


 「こんなに手の込んだ細工をしてある商品がこんなに安価で購入できるのか」という驚きも。「こんなに可愛いポチ袋なら中身が少なくても喜んでもらえそう」などと邪な考えも浮かんでしまったのはここだけのヒ・ミ・ツ。

手前の寿司が回って楽しい。外国の方にも喜ばれるのでは。他にも見ているだけでいつの間にか時間がたっているような楽しいグリーティングカードが所狭しと並んでいる。


 散歩のついでにふらりと立ち寄ってみるのもよい。
 木の葉の色の移ろいのように、季節ごとの商品に四季を感じることが出来るだろう。
 いつものメールの代わりにグリーティングカードを出してみたくなるかもしれない。
 日頃仕事をしている時に感じる「こういうものがあればなぁ」が、あるかもしれない。
 また、それをみな子さんや由紀さんに言ってみて欲しい。
 
 そうすれば、「文具のヨシダ」は、あなたの「セレクトショップ」になるはずだ――きっと。

元々ペンなどは文具店で買うようにしていた私ですが、改めて「取材」という形で訪れてみると新たな発見が色々とあって楽しかったです。「文具店はその店によって品揃えが全然違うのよ、色々な文具店を覗いてみてごらん、同じ品揃えのところはひとつもないから」という言葉に、店主さんの気概を感じました。日々試行錯誤を繰り返すその姿勢、素敵です。

2012.11.7 (取材:うと)